解剖学の勉強法と覚え方(学ぶ順番・骨や筋肉の語呂・3Dアプリの使い方)
筋の章に入ったとたん、起始・停止に出てくる骨の名前がひとつも分からない。たいていここで止まります。原因は、筋を骨より先に覚えようとした順番のほうにあって、先に骨を済ませておくと600を超える筋は骨の名前の組み合わせとして読めるようになります。
このページには、学ぶ順番と、検索の多い「覚え方」を部位ごとに表にして置きました。語呂は順番を思い出すための道具です。位置のほうは3Dで回して覚えるのが早く、名前を押すと個別の記事が開き、記事からアプリの3Dモデルに進めます。
学ぶ順番と量の目安
- 学ぶ順番
- 骨 → 関節・靱帯 → 筋肉 → 神経・血管 → 内臓。筋肉の起始・停止は骨の名前が前提なので、骨を飛ばすと筋肉で必ず止まります
- 覚える量
- 骨206個(新生児は約300個)、筋肉は名前のあるもので600以上、脳神経12対、脊髄神経31対、椎骨は頸7・胸12・腰5・仙5・尾3〜5
- 1回の単位
- 1部位15分。例: 足根骨7個なら、3Dで回しながら名前を言う → 名前を隠して言う → 翌日と1週間後にもう一度。3回目でほぼ定着します
- 語呂の使いどころ
- 数と順番だけ。足根骨の7個や脳神経の12対は語呂が速いが、位置関係は語呂では残らない。位置は3Dモデルと触診で覚えます
- 試験での問われ方
- 筋肉は「起始・停止・作用・支配神経」の4点セット、神経は「損傷したときの症状」、骨は「数と部位の名前」。この形に合わせてノートを作ります
- アプリでの手順
- teamLabBody で部位名を検索 → 周囲の筋肉を非表示にして深層まで見る → ピンとメモに自分の語呂を残す → 翌日はメモだけ見て名前を言えるか確かめます
覚え方の一覧(部位別)
名前を押すと個別の解説記事が開きます。
骨の覚え方
骨は数が決まっているので、語呂がよく効きます。手と足は近位列・遠位列に分けて、親指側から数える習慣をつけると名前の順番が崩れません。
| 覚えるもの | 数 | 覚え方・語呂 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 足根骨 | 7個 | 近位から「距骨・踵骨・舟状骨、立方骨と楔状骨3つ(内側・中間・外側)」。踵骨がいちばん大きく、距骨がその上に乗る | 舟状骨は手根骨にもある。足の舟状骨は内側、立方骨は外側で、並びが左右で逆にならないよう3Dで確認 |
| 手根骨 | 8個 | 近位列は親指側から「舟・月・三角・豆」、遠位列も親指側から「大菱形・小菱形・有頭・有鉤」。各列4個ずつ | 豆状骨は三角骨の掌側に乗っているので、横一列に見えない。転んで手をついたときに折れやすいのは舟状骨 |
| 椎骨(背骨) | 頸7・胸12・腰5・仙5・尾3〜5 | 「朝7時、昼12時、夕方5時」で頸・胸・腰。仙椎5個は癒合して仙骨1個、尾椎は3〜5個で尾骨になる | 頸椎は7個なのに頸神経は8対。第1頸神経が後頭骨と環椎の間から出るため |
| 肋骨 | 12対24本 | 1〜7が胸骨につく真肋、8〜10は軟骨でつながる仮肋、11・12は前が自由な浮遊肋。「7・3・2」で区切る | 第1肋骨は鎖骨の下に隠れて触れない。1本多い人(頸肋)も少ない人もいる |
| 脛骨と腓骨 | 各1本 | 脛骨は内側で太く「すね」、腓骨は外側で細い(「ひ」=細い)。内くるぶしは脛骨、外くるぶしは腓骨 | 腓骨は体重をほとんど支えない。膝関節をつくるのは脛骨だけで、腓骨は膝の関節面に入らない |
| 頭蓋骨 | 15種23個 | 脳頭蓋6種8個(前頭・頭頂×2・側頭×2・後頭・蝶形・篩)、顔面頭蓋9種15個。対のものと1個のものを分けて数える | 教科書によって舌骨や耳小骨を含めるかで総数が変わる。「23個」は舌骨を含み耳小骨を除いた数 |
| 中足骨と趾骨 | 中足骨5本・趾骨14本 | 手と同じ構成。親指(母趾)だけ趾骨が2本、ほかの4本は3本ずつ。合計 5+14=19 | 「指」は手、「趾」は足。足の親指は母趾、人差し指にあたるのは第2趾と呼ぶ |
筋肉の覚え方
筋肉は「起始・停止・作用・支配神経」の4点で覚えます。名前に起始と停止が入っている筋(胸鎖乳突筋、腕橈骨筋)から始めると、名前を見ただけで位置が分かる感覚がつかめます。
| 覚えるもの | 数 | 覚え方・語呂 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 腱板(ローテーターカフ) | 4筋 | 棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋。英語の頭文字で SITS(Supraspinatus, Infraspinatus, Teres minor, Subscapularis) | 大円筋は腱板に入らない。肩甲下筋だけが前面にあり、内旋に働く |
| ハムストリングス | 3筋 | 大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋。外側に二頭筋、内側に「半」のつく2つ。どれも坐骨結節から起こり膝を曲げる | 大腿二頭筋の短頭だけは大腿骨から起こる。股関節の伸展に働くのは長頭と半腱様筋・半膜様筋 |
| 大腿四頭筋 | 4頭 | 大腿直筋・外側広筋・内側広筋・中間広筋。「直・外・内・中」。4つとも膝蓋骨を経て脛骨粗面に停止 | 股関節の屈曲にも働くのは大腿直筋だけ。中間広筋は大腿直筋の下に隠れている |
| 下腿三頭筋 | 3頭 | 腓腹筋の内側頭・外側頭とヒラメ筋。3つが合わさってアキレス腱(踵骨腱)になり踵骨に停止 | 腓腹筋は膝もまたぐ二関節筋。膝を曲げると腓腹筋が緩むので、ヒラメ筋だけを調べるときは膝を曲げて底屈させる |
| 脊柱起立筋 | 3筋群 | 外側から「腸肋筋・最長筋・棘筋」。「腸・最・棘(ちょう・さい・きょく)」で外から内へ | 多裂筋は脊柱起立筋に含めない(横突棘筋群)。起立筋の支配は脊髄神経の後枝で、前枝ではない |
| 腸腰筋 | 2筋(+小腰筋) | 大腰筋(腰椎から)と腸骨筋(腸骨窩から)が合流して小転子に停止。股関節屈曲の主力 | 小腰筋は約半数の人にない。大腰筋の起始は腰椎の椎体と横突起で、腸骨筋とは起始が違う |
| 横紋筋と平滑筋 | 3種類 | 骨格筋・心筋は横紋あり、平滑筋はなし。意思で動かせる随意筋は骨格筋だけ | 心筋は横紋筋なのに不随意。「横紋=随意」と覚えると心筋で間違える |
| 名前に起始・停止が入る筋 | — | 胸鎖乳突筋=胸骨・鎖骨から乳様突起へ。腕橈骨筋=上腕骨から橈骨へ。肩甲舌骨筋=肩甲骨から舌骨へ。名前がそのまま位置 | 「起始」は体幹に近い側、「停止」は遠い側が原則だが、顔面や体幹の筋では例外が多い |
神経の覚え方
神経は「どこから出て、どの筋を動かし、傷つくと何が起きるか」で覚えます。脳神経の12対と脊髄神経の31対は、語呂で順番を固定してから1本ずつ支配を足していくのが早い。
| 覚えるもの | 数 | 覚え方・語呂 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 脳神経 | 12対 | 「嗅いで視る、動く車の三の外、顔聴く舌は迷う副舌下」で I〜XII。感覚だけの神経は I・II・VIII | 視神経(II)は末梢神経ではなく脳の一部。滑車神経(IV)だけが脳幹の背側から出る |
| 脊髄神経 | 31対 | 頸8・胸12・腰5・仙5・尾1。「8・12・5・5・1」で合計31。前根が運動、後根が感覚 | 頸椎7個に対して頸神経8対。C1〜C7は同じ番号の椎骨の上から、C8だけ第7頸椎の下から出る |
| 腕神経叢 | C5〜T1 | 「根・幹・区・束・枝(こん・かん・く・そく・し)」の順に分かれて、筋皮・正中・尺骨・橈骨・腋窩の5本になる | 束の「外側・後・内側」は腋窩動脈に対する位置。橈骨神経は後束から、正中神経は外側束と内側束の両方から |
| 坐骨神経 | L4〜S3 | 人体でいちばん太く長い神経。大坐骨孔から殿部に出て、膝の上で脛骨神経と総腓骨神経に分かれる | 分かれる高さは人によって違い、梨状筋を貫く型もある。殿部への筋肉注射は外側上方を選ぶ |
| 上肢の3神経の損傷 | 3本 | 手の形で見分ける。橈骨神経は下垂手、正中神経は猿手、尺骨神経は鷲手。「とう・さる・わし」 | 感覚の分担は、正中神経が母指側の手のひら、尺骨神経が小指側、橈骨神経が手の甲の母指側 |
血管の覚え方
血管は幹から枝へ。動脈は心臓から遠ざかる向き、静脈は近づく向きで追います。採血や点滴で使う皮静脈は、骨のランドマークとセットで覚えると実習で迷いません。
| 覚えるもの | 数 | 覚え方・語呂 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 下肢の表在静脈 | 2本 | 大伏在静脈は内くるぶしの前を上がって鼠径部で大腿静脈へ。小伏在静脈は外くるぶしの後ろから膝窩静脈へ。「内・前・大」「外・後・小」 | 「大」は太さではなく長さ。大伏在静脈は人体でいちばん長い静脈で、バイパス手術の材料になる |
| 上肢の皮静脈 | 3本 | 親指側が橈側皮静脈、小指側が尺側皮静脈、肘でつなぐのが肘正中皮静脈。採血は肘正中皮静脈が第一選択 | 肘正中皮静脈のすぐ深層に上腕動脈と正中神経がある。針を深く入れすぎない理由 |
| 頸部の動脈 | 左右各1本 | 総頸動脈が甲状軟骨の上縁の高さで内頸動脈(脳へ)と外頸動脈(顔・頭皮へ)に分かれる。脈を触れるのは胸鎖乳突筋の前縁 | 内頸動脈は頸部で枝を出さない。頸部で枝が見えたら外頸動脈。左右で起こり方が違い、右は腕頭動脈から、左は大動脈弓から直接 |
内臓・皮膚の覚え方
内臓は「通り道の順番」と「どの体腔にあるか」で覚えます。管の順番はつなげて一気に言えるようにし、位置は3Dで前から後ろへ層をはがして確認してください。
| 覚えるもの | 数 | 覚え方・語呂 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 皮膚(表皮の層) | 5層 | 外から「角質層・淡明層・顆粒層・有棘層・基底層」。「かく・たん・か・ゆう・き」。細胞が生まれるのは基底層 | 淡明層があるのは手のひらと足の裏だけ。ほかの部位の表皮は4層 |
| 消化管の順番 | 口から肛門まで約9m | 口腔 → 咽頭 → 食道 → 胃 → 十二指腸 → 空腸 → 回腸 → 盲腸 → 上行・横行・下行・S状結腸 → 直腸 → 肛門管。小腸は十二指腸・空腸・回腸の3つ | 空腸と回腸に明確な境目はない。おおよそ口側5分の2が空腸、肛門側5分の3が回腸 |
| 横隔膜の3つの孔 | 3孔 | 大静脈孔はT8、食道裂孔はT10、大動脈裂孔はT12。「静・食・動(せい・しょく・どう)」の順に 8・10・12 と2つずつ下がる | 大静脈孔だけ腱中心を通るので、吸気で広がる。食道裂孔は筋の部分を通るので、吸気で締まる |
勉強法の記事
よくある質問
解剖学はどこから勉強を始めればいいですか?
骨からです。筋肉の起始と停止、関節の名前、神経や血管の走行は、すべて骨の名前を使って説明されます。骨を先に覚えると、あとの系統は「どの骨からどの骨へ」という形で読めるようになります。順番は骨、関節と靱帯、筋肉、神経と血管、内臓です。
語呂合わせだけで覚えても大丈夫ですか?
数と順番には有効ですが、位置関係は残りません。足根骨の7個を語呂で言えても、舟状骨が内側か外側かは語呂では分からない。語呂で順番を固定してから、3Dモデルを回して位置を見る、自分の体で触れる、の2つを足すと定着します。
1日どのくらい勉強すればいいですか?
1部位15分を目安に、翌日と1週間後に同じ部位を名前を隠して確認する方法が続きやすいです。長時間まとめてやるより、同じ部位に3回触れるほうが残ります。アプリのメモに自分の語呂を残しておくと、2回目以降が数分で済みます。
教科書とアプリはどう使い分けますか?
教科書は数・分類・用語の正確さ、アプリは位置と層の理解に向いています。教科書の図は決まった角度の断面なので、裏側や深層が分かりにくい。アプリで筋肉を1枚ずつ非表示にして深層を見てから教科書の図に戻ると、図の意味が読めるようになります。
理学療法士や作業療法士の国家試験では解剖学はどう出ますか?
筋肉は「起始・停止・作用・支配神経」の組み合わせ、神経は「損傷したときに起こる症状」、骨と関節は「構成する骨の名前と関節の種類」が定番です。たとえば「猿手になるのはどの神経の損傷か」のように、解剖と症状をつなぐ形で問われます。
すべての構造を3Dで。解剖学アプリ teamLabBody で確認できます。
